九字護身法

忍者が用いた呪法として有名な『九字護身法』は、中国から伝わったと云われる法で、元々中国の神仙修行の際に、神仙の加護を願い護身に誦える呪文であり、日本には密教の呪法の一つとなって伝わっています。

山野に起居して霊力を強めようとする修験道の行者を山伏といい、天台系の聖護院と真言系の醍醐寺三宝院を中心に組織されました。
その山伏が修行の上で信仰していたとされる修験道では、お馴染の「九字護身法」を用いていたり、忍者が山林でのゲリラ戦法を得意としていたことなどから、忍者のルーツは山伏から来たという説もあります。

修験者は、険しい山での修行によって特殊な技能と呪術を身につけた者達であるが、忍術は元々、そんな修験者の戦法だと言われています。
そして、その修験道と関わりが深い「密教」とは、印(手の指を様々に組み合わせたもの)を結び、真言(仏の真理を表す秘密の言葉)を唱え、仏の御加護を祈るものです。

江戸中期以降になると、呪術的要素の強い忍術伝書がいくつか編まれるようになりました。
その中には九字結印法が体系化され、様々な伝授法が残されています。
九字の切り方や手印は、修験、神道、各宗派により違いがあります。

▼九字護身法の印の一例

天台宗 『臨兵闘者皆陣列前行』
「臨める兵、闘う者、皆 陣列ねて、前を行く」

真言宗 『臨兵闘者皆陣烈在前』
「臨める兵、闘う者、皆 陣烈れて、前に在り」

仏教  『臨兵闘者皆陣裂在前』
「臨める兵、闘う者、皆 陣裂きて、前に在り」

道教  『臨兵闘者皆陣裂在斬』

また、左手を鞘に見立てて腰にあてがい、右手の人差指と中指を立て刀に見立てた「刀印(とういん)」を用い、空に格子模様を描き結界を張って邪悪の侵入を防ぐとされる「早九字護身法」もあります。
この早九字は、その簡便性から臨時の精神集中や厄除けの手段として武士や忍者にも広く用いられました。
忍者達は戦の前に落ちつくための精神統一法として印を結んでいました。
伊賀忍者たちも戦の前はもちろん、朝は太陽に、夜は月に向かって朝晩2回九印を結び、日々気を高めていたと云われています。


忍者のふるさと